名無しさん

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『次はいつ会えますか?』
 ポコンと、独特の音を立て端末の画面に映し出されたその文字列を見て、はてと首を傾げた。
 相手の名前に見覚えはなくて、またいつもの迷惑メールかと思い既読スルーを決め込んだ。
 しばらくしてまた、ポコンと端末が鳴る。
『見てるんでしょう?無視しないでくださいよ』
 なんだか気味が悪く感じて今度も無視を決め込む。途端に、端末がポコンポコンと鳴り続けた。
『無視しないでよ』
『知ってるんだから』
『早く出てよ』
『つめたい』
『みてるんだから』
 ひっと悲鳴をあげたはずみで、手から端末が転げ落ちる。それを追って身をかがめた瞬間、ちょうど今まで自分の頭があった位置に凄まじい音を立てて鉄骨が突き刺さって、その衝撃波で自分はバランスを崩しその場に尻もちをついた。
「だ、大丈夫ですか!?」
顔面を蒼白にしてこちらへ駆け寄ってきた作業員の話ではトラックに積んでいた鉄骨の束をまとめていたロープが突然切れ、勢いついた鉄骨の一部が吹き飛んだということらしい。
 ガタガタと震えながらも大丈夫ですと返したこちらに、作業員の一人がそれは良かったと言いながら手を差し伸べてくる。その手を取りたちあがろうとした、その時だった。
 再びポコン、と画面がめちゃくちゃになって壊れているはずの端末が鳴る。


『無知は罪、間に合ってよかった』

7/11/2023, 10:31:58 AM