たーくん。

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人で溢れている放課後の下駄箱。
皆が帰る中、私は隠れて、一人の男子が来るのを待っていた。
「あっ……」
来た。隣のクラスの山下君。
山下君は自分の下駄箱に近づき、蓋を開けた。
中に入ってる物に気づいたのか、驚いた表情をしている。
入っていた物を取り出す山下君。
私は、山下君の下駄箱にラブレターを入れたのだ。
だからこうして、隠れて山下君の反応を見ている。
……あれ?山下君が持っているラブレターの封筒の色が違う。
私はピンクの封筒に入れたはず。
山下君が手に持ってるのは、緑。
もしかして、私の他に誰かラブレターを入れたのだろうか?
山下君は緑の封筒を開けて、中に入っていた手紙を広げて読んでいる。
しばらくして、読み終えたのか、溜め息をつく山下君。
手紙を封筒に入れ、鞄に入れた。
今更だけど、隠れてじーっと山下君を観察している私は不審者だと思う。
でも、やっぱり気になるじゃん?女の子だもん。
山下君は、私が入れたピンクの封筒を取り出し、中に入っていた手紙を広げて読み始めた。
どんな反応をするのか、すごくドキドキする。
私の想い……届いて……。
だけど、山下君はさっきと同じように、ふう……と溜め息をついて、手紙を鞄に入れた。
そして下駄箱から靴を取り出し、履き替えて何事もなかったかのように帰っていく。
……多分、あの反応だと、駄目だったかもしれない。
力が抜けて、その場に座り込む。
フラれたよね……私。
立ち上がるのに時間が掛かったけど、なんとか自分の足で家に帰った。

次の日の朝、下駄箱を開けると、中に小さい封筒が入っていた。
中には手紙が入っていて、内容は……。
“手紙ありがとう。こんな俺でよかったら、付き合ってほしい。山下より“
「う、うそ……」
力が抜けて、思わずその場に座り込んでしまう。
私の想いが……山下君に届いていた。

7/9/2025, 10:25:53 PM