G14

Open App

 こんにちは。
 私、須藤霧子。
 『刹那的に生きる』がモットーの、どこにでもいる女子高校生。
 だから、学校も気分で行ったりいかなかったりしたんだけど、ついに先生に呼び出され怒られた。
 無視しようとも思ったけど、進級できないと言われれば話は変わる。
 『刹那の女』の異名を取る私であるが、仲のいい友達と離れる事だけは避けたい。
 自由には責任が伴う事を思い知ったね。

 明日からきちんと出よう。
 そして、楽しく明るい学校生活を送るんだ。
 そう決意した翌朝、見事に寝坊した。
 私は起き抜けに制服に着替え、朝食のパンを咥え、玄関を出て走り出す。
 我ながらベタだなあ、と思いつつも懸命に走る。
 今日は遅刻するわけにはいかないのだ。

 家から飛び出して全力で走る。
 人間追い詰められたら、
 このまま行けば間に合うな。
 そう頭の中で計算し、遅刻回避の文字が浮かんだ時、それは起こった。
 なんと曲がり角から、人が飛び出してきたのだ。

 反射的に止まろうとするが、勢いは殺せない。
 これは駄目かと、思わず目を瞑ってしまう。
 走った勢いのまま人にぶつかり、体が空中に投げ出される。

 そして空中に投げ出された私は地面に叩きつけられ――なかった。
 恐る恐る目を開けると、私は空中をすーーと飛んでいた。

 まるで、アクションゲームなどで当たり判定の処理をミスったキャラクターの様にである……
 バグかあ……
 そう思った刹那、私の頭に電流が走る。

 そして私は思い出す。
 前世の事をを。
 私はトラックにぶつかって一度死に、この世界で生まれ変わったのだ。
 そして、ここはゲームの世界。
 タイトルは『パンと少女とファンタジー』という、有名なバグゲーである。

 さっきぶつかったのは、この後転校して来るであろう私の運命の相手。
 衝突イベントは、ゲームを開始して最初のイベントであるのだが、そこそこの確率でこうして吹き飛ぶ。
 本来ならこの後、転校してくる彼との再会イベントが発生するのだけど、彼はぶつかった衝撃で世界のかなたに吹き飛ばされたので学校に来ない。

 しょっぱなからこれなのだから、バグゲーとして大いに有名になった。
 もちろんバグはこれだけではなく、数多のバグがプレイヤーを待ち構えている。
 
 例えばこの後の転校イベント、当事者がいないためイベントが起きないかと思いきや、彼の代わりに世界を脅かす魔王が転校してくるのである。
 本当、何をどうしたらそうなるのか不明すぎて、一時隠しルートではと噂されたほどである。
 もちろん、そんなことは無い。

 ぶっちゃげそんなイベントに参加したくないので、『刹那の女』としてはサボりたい気持ちでいっぱいである。

 だけどこのバグは、常に学校の方に吹き飛ばされ、そのまま窓から教師に直接入り、自分の席に着席、それと同時にHRが始まると言う、悪夢のような流れなのだ。
 ほんとどういうバグだよ。

 そして、このイベントを無事こなしても、様々な頭の痛いイベントが待っている……
 これからの学校生活は不安でしかない

 やっぱり、刹那に生きることにしよう。
 私は自由の利かない空中で、私は決意を新たにするのであった。
 

4/29/2024, 10:29:47 AM