ノックの音に顔を上げる。
「あぁ、いたいた。あのさぁ、ちょっと教えて欲しいんだけど」
機械オンチの同僚は時々こうしてやって来ては、仕事に使うツールの操作方法を教わろうとする。
こちらとしてもそれは別に構わないから、来る度に教えてやる。
「ありがと」
そんな事を何度か繰り返していたある時、ふと浮かんだ疑問。
「わざわざここまで来なくても隣に聞きに行きゃいいんじゃねえか?」
隣の部署には学生時代からの共通の友人がいる。わざわざ棟の違うここまで来なくてもコトは足りる筈だ。そう問うと、同僚は天井を見上げ何か考えるような仕草をして、聞こえない声でなにごとかを呟いた。
「あ?」
「·····何でもない」
顔が赤い。
体調でも悪いのだろうか。
「迷惑ならもう来ないよ」
「迷惑ってことは無ぇけど·····」
「とにかく助かったよ。教えてくれてありがと」
「·····ああ」
しばらくして、俺は思い知ることになる。
自分の鈍感さと、同僚の不器用さを·····。
END
「君に会いたくて」
1/19/2026, 4:12:10 PM