猫とモカチーノ

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人間には、それぞれ色がある。

クラスで人気者のあの子はキラキラ輝く金色。
陸上部のエースの彼は赤色。
いじめっ子の彼は紫色。
いつも花の世話をしている彼女は白色。

みんな色とりどりで、それぞ個性がある。
それなのに僕には色がない。

ここにいるのにいないみたいで。
みんなのような色で例えるなら"透明"ってやつだ。

自分だけの色に憧れる透明な人間。

「ねぇ、花が好きなの?」
「えっ」

どうやら、そんな透明な人間に興味を持つ物好きもいたらしい。

「よくこの花を眺めているでしょう?だから、好きなのかなって」
「別に、好きって訳じゃない」
「えー、そうなんだ。毎日のように熱心な目で見てるから、てっきり好きなのかと思ってたよ」

そんなに熱心に見ていたのだろうか。
たまたま自分の席が窓際で、たまたまそこに花が飾られていただけ。

「そんなに見てた?」と聞くと、彼女は「見てたよー」と、花が咲くような笑顔を見せる。

そんな彼女を見て、やっと気づく。
なぜ僕は、毎日無意識に花を見つめていたのか。

「……確かに、花が好きって訳じゃないけど」
「けど?」
「なんか、色が綺麗だなと思って。無意識に見ちゃってたのかもしれない」
「ふふっ、なにそれ」

人間にはそれぞれ色がある。
ただ、その色はずっと同じではないらしい。

白色だと思っていた彼女が桃色に変わったように。
僕もいつか、透明じゃなくなる時が来るのかもしれない。


お題『透明』

5/21/2024, 1:34:59 PM