『恋物語』
あたしの名前はモブ崎モブ子!
私立ヘンテコリン学園に通う高校一年生。
あたしには今、好きな人がいる。
同級生のセバスチャン・フェンリル君だ。
あたしは今日、彼に告白しようと思う。
彼を秘密の花園に呼び出すモブ子。
「話とは?」
「実はあたし、あなたのこと……」
「オーホッホッホ!
そうはさせませんわよ、モブ崎さん!」
するとそこへ高飛車お嬢様が乱入してきた。
両サイドには取り巻きの女子生徒達を連れている。
「出たわね、おじゃま虫!」
「ホホホ!そう簡単に告白などさせるものですか!
さあ、貴女たちやっておしまい!」
「わたしたちにお任せを!」
「こんなモブ、すぐに片付けてみせますよ!」
とりまきのジャス子とサティ子が
しょうぶを しかけてきた! ▼
2対1、圧倒的にこちらが不利な状況……。
ふと、モブ子はある事を閃いた。
「そうだ!これを使って!」
モブ子が取り出したのは学級委員から購入した
『魔法のマイナスイオンヘアドライヤー』
何でもこれは髪をサラサラにするだけではなく
悪い心を持つ輩を退治してくれるのだとか。
モブ子はドライヤーの吹き出し口を
彼女らに向けて、大声で叫ぶ。
「食らえ!マイナスイオンアターック!」
ぶおおおおおおおおおおおお!
ドライヤーから心地よい風が
勢いよく放たれた。
「「きゃあああああああ!」」
風に当たった取り巻き女子たちは
その場に跪き、悶え苦しみ始める。
暫くすると、二人はさっと起き上がった。
彼女たちの顔は先程まで浮かべていた
意地悪な表情から一転、
清々しいものに変わっていた。
「ジャス子!サティ子!一体どうしたのですか?!」
高飛車お嬢様が慌てた様子で声をかける。
「ジャス子?わたしの名前はイオンです」
「今日ポイント5倍デーじゃん!」
どうやらドライヤーから放出されたマイナスイオン
によって彼女たちは浄化されてしまったようだ。
戦意喪失した二人に唖然とする高飛車お嬢様。
「な、なんということでしょう……。
くっ、覚えてなさい!」
捨て台詞を吐いた後、彼女は爽やか笑顔の
取り巻きたちを引きずって、
そそくさと逃げていった。
悪は滅び、正義が勝つ。
これで邪魔者はいなくなったわね。
さあ、告白の続きを……!
「あの!フェンリル君……」
振り返ると彼の姿がどこにも見当たらない。
「え….…」
びゅうっとその場に寂しげな風が通り抜けた。
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教室へ戻る途中、セバスチャンは
花園での出来事について考えていた。
主と名前の知らない女子との間に何らかの
因縁があり、一触即発の雰囲気が漂っていた。
だが彼はそれを止めようとはしなかった。
魔術師から「女の争いに関わるべからず」
と忠告されていたのだ。
セバスチャンは主の無事を願い、そっと呟く。
「主、ご武運を」
5/18/2024, 6:00:09 PM