未知亜

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ㅤ晴れた日の洗濯の歌。ベランダの花に水やる歌。パスタを美味しく茹でる歌。何をするにも君は大抵変な歌を歌っていた。
「あんまり家事が得意じゃないから。せめて楽しくやりたいなって」

ㅤあの日うたた寝した僕は、微かな歌声で目を覚ました。手元を見たままで、君が「おはよ」と笑う。
「夢の中にも聞こえた?ㅤ疲れたあなたに林檎を剥く歌」
ㅤ持ってきたお見舞いの林檎は、小さなウサギになっていた。僕は無言で口を開ける。君の手から生まれたいびつなそれが、前歯の先でサクリと崩れる。

ㅤ君の前に林檎をまたひとつ。手を合わせ目を閉じたら、君より上手にウサギを剥こう。ややうろ覚えな変な歌を歌いながら。


『歌』

5/25/2025, 10:00:04 AM