文月彩

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ずっと空を飛びたかった。

地面から離れてふわふわと。
高く高く飛んでいく風船みたいに空に行きたかった。
小さい頃、風船を見かけるといつもねだっていた。
買ってもらって、家に帰って、すぐに空へ飛ばしていた。
広い空へとだんだん小さくなっていく風船に、めいっぱい手を伸ばして、かかとを浮かす。
そうしたら、自分もきっと飛べるんだと思っていた。

風船にシャボン玉、紙飛行機。
暇さえあればいつも飛ばして遊んでいた。
空に向かって飛んでいくものが好きだった。
……どれも途中で飛べなくなってしまうけど。

今。
私は高い高いところにいる。
空を飛べないなら、せめて空の近くに行きたかった。
上を見上げて手を伸ばす。
そして、一歩。

ーーあぁ、私は今空を飛んでいる!

10/14/2022, 1:47:11 PM