『対』
この世界には、
『百年に一度、ガラスのように綺麗な花が咲く。』
と伝えられる花がある。
それは願いを叶える花だとも言われている。
ただそれはとても繊細な花で、選ばれし者でなければ触れた瞬間に黒く染まり、一瞬にして花が砕け散るのだと言う。
百年に一度、花が咲いたのと同時に
どこかでたった一人、生まれたときから腕にその花のアザが浮き出る子供が居る。
それが選ばれし者の証なのだ。
人間は残酷だ。願いを叶えるためにそのアザを持つ子供をさらうこともあった。
今では分かった瞬間に国の庇護化に置かれ、
城で育てられる。
その歴史はもうすでに千年を越えた。
そして、そろそろ11回目の花が咲く。
しかし、今回はとても希少な例だった。
同じ日、同じ時間に二人の子供が生まれた。
そしてその子供たちは、2人ともアザを持っていた。片方が偽装したのではないかと疑われたが、
二人の母親を見る限りそうでないことは明白だった。
分からないものを疑っていてもなにも進まない。
この2人が花のもとまで行ける日が来たら、片方ずつ触れる。それでやっとどちらが本物か分かるとの決断を下した。
その判断をしたのも、二人のアザが対で同じ場所にあったこと、まぐれでは難しい場所にもうひとつ、アザが確認できたことにあった。
二人のアザはそれぞれ、右腕と左腕にあった。
そして不思議なことにそれぞれが同じ高さ、大きさだった。さらに、首に花のアザが同じ場所にあったのだった。
2人はとても仲が良く、まるで姉妹のように育った。
そして二人はついに百年に一度咲く、花を探しに行く旅に出ることになった。
お題:《繊細な花》
6/25/2023, 3:47:59 PM