私に刃向かう剃刀は、
傷ついた手首の脈から出血する幻想を見せる。
玄関にひどくねじ込まれる鍵、
そのねじ込まれた鍵に落とされる錠前が、
私の心臓を床に叩きつける衝撃となる。
鼻をかむのが止められない豚の悲鳴、
唾を撒き散らすくしゃみが挨拶だ犬どもよ、
痰混じりの笑いに誰も笑ってくれない死に損ない。
無知と無礼と無能に私の心臓は唸り出す。
怨嗟渦巻く熱き血潮が身も心も黒くただれさせる。
たましいまでも灰燼に帰する熱が叫ぶのだ。
殺せ、殺せ、ぶっ殺せ!
死を以て黙らせろ!
怒りに飲まれる心地よさは幼い頃から知っている。
心のざわめきが、筋肉を強張らせ、
内臓を引きつらせ、神経に痛みを走らせる。
苦しいが、同時に生命の喜びも感じる。
私の耳に響く心臓の鼓動はいつも怒っている。
この怒りをもっと聞きなさいよと怒鳴っている。
さっさと早くあいつらの頭を
叩いて叩いて叩き潰してよって泣き喚いている。
私はドキドキする心臓の鼓動に合わせて、
片手で鷲掴みにした家族の頭を
何度も何度も床に叩きつける妄想に耽った。
(250315 心のざわめき)
3/15/2025, 12:45:55 PM