ㅤ窓に雨が打ち付ける音で、パソコン画面から顔を上げた。カーテンレールの隙間が、一瞬明るく光り、私は頭の中で数を数える。いち、にい、さん、しい、ご……。
ㅤドーンと音が響いた。意外と近くに落ちたようだ。外で「わー、こわいよー!」と子どもの叫び声がした。
ㅤ座ったまま出窓のほうに腕をのばし、カーテンを少しめくってみる。灰色を纏った住宅街を、びしょ濡れになった小学生が走り抜けていくのが見えた。風がかなり出てきたらしい。街路樹の枝先がしなる。
ㅤ家の中から眺める雨は、昔から好きだった。こんなふうに風と混じった雨模様なら、なおのこと。
ㅤ遠くで細い線のようになった雨が、風に煽られて斜めに傾き、舞台緞帳の動きでくねっていく。何かと共に在ってはじめて、意識できることがある。
ㅤたとえば今日みたいな風と雨のように。あなたと共に在れたらと思ってみる。それはどこか乱暴で、刹那的な願いかもしれない。
『風と』
5/2/2025, 9:55:30 AM