「雪降ったよね」
「雪の語源って知ってる?」
「え、知らない」
「雪ってね、いろんな説があるんだけど、“ゆるい”から来てるっていう説があるんだよ」
「どゆこと?」
「雪ってさ、降ってくるのを手で触ると、ゆるっと溶けていくだろ?」
「ああ、体温で溶けちゃうね」
「それを昔の人は“ゆるい”ものだなぁって表現したんだよ。だから“ゆるきもの”が縮まって“ゆき”になったんだ」
「マジで?」
「嘘」
「はぁ?」
「いや嘘だよ。いま作った説。今日ほらエイプリルフールだから」
「嘘かい!」
「なんか嘘ついてたら腹減ってきたな」
「どういう体してんだよ。嘘ついたらカロリー消費するって」
「まあ話を展開する上での嘘なんですけどね」
「言わなくていいんだよ」
「あ、おにぎり屋さんがある」
「おにぎりの専門店。東京では割とよく見る業態。あ、じゃあおにぎりの語源教えてくれよ」
「お、それを俺に聞いちゃう?」
「やる気だねぇ」
「おにぎりなんてその名の通りよ、鬼を斬る! これさえ食べれば鬼だって斬れるんだぞ! って桃太郎が言ったからおにぎり」
「ええ? あれ、きびだんごじゃないの?」
「いやいや、きびだんごなんて岡山の人が地域振興のために後付けで考えたやつだから。実際はおにぎりで犬、猿、キジを勧誘したんだよ」
「知らなかったぁ」
「そうそう、その時におにぎりを裏で“握らせた”からおにぎりになったって説もある」
「裏金みたいに? 嫌な語源!」
「ぜんぶ嘘なんだけどね」
「嘘かい! わかってたけど嘘かい! でもおにぎりって、“おむすび” とも言うよね」
「その語源も知りたい?」
「おお、どんどん出てくるな」
「おむすびは簡単だよ。猫のしっぽ。これを結んだやつがいるんだな。その形とおむすびの形が似てるから、尾を結んだみたいだってんで“尾結び”でおむすびだよ」
「お前すごいな、これももちろん」
「嘘だよ」
「じゃあじゃあ、お餅! お餅の語源を教えてくれよ」
「お前、お米好きだな。まあいいや。えーと江戸時代はな、お餅を屋台で焼いて売ってたんだな。そんで屋台だから座って食べるような場所がねぇ。すると買った人はどうする?」
「その場で食べられなければ……、“お持ち帰り”で? ああ!」
「その通り。お持ち帰りを江戸っ子が短くして“おもち”よ」
「流れるように出てくるな。参加できて嬉しいよ」
「嘘だけどな」
「なあ、そんなことより本当に腹減って来ちゃったよ。早くメシにしようぜ」
「そのメシって言葉は逆さ言葉でな」
「おお始まったよ」
「メシってのは昔から一日の終わりに食べるものだったんだよ。一日の締め、これを逆さにしてメシになったってわけだ」
「これも嘘です〜」
「そんじゃあ、ここらでおシメぇよ」
「またね」
「その“またね”っていうのは“待ったなし”から来てるんだけどよ……」
「もういいから!」
4/1/2025, 12:28:41 AM