ミミッキュ

Open App

"時計の針"

 明日の準備を済ませると「んー……っ」と伸びをし、顔を上げて診察室の壁掛け時計を見る。
 時刻は十一時五十九分と、秒針は十一十二のちょうど間の所を指している。もうすぐで零時になる。

 カチ、カチ、カチ、カチ、
 カチ

 秒針、短針、長針が重なり合う。そしてすぐに秒針は動いて回り出す。
 何かに弾かれたかのように、電源を落としたパソコンの黒いモニターを見る。
 そこに写る自分自身と後ろにある棚やファイル等があるだけで、それ以外は何もない。
──なんで俺……今、モニターを見たんだ?
 モニターに写る自分を見つめながら、モニターに写る自分に心の中で疑問をぶつける。
──あの感じ、まるで条件反射のようだった。一体何故……?何が条件となった?恐らく、見ていた時計だろう。けれど、それで何故あの行動になる……?
 じっ、とモニターに写る自分自身を見つめながら悶々と考える。
「みゃあ」
「うおっ!?」
 いつの間にかデスクの上に乗っていたハナに急に声をかけられ、思わず素っ頓狂な声を上げ飛び退く。その声にハナの身体がピクリと跳ねる。
「あ……、脅かして悪ぃ……」
 ハナの頭を撫でる。気持ち良さそうに目を閉じて、頭を擦り付けてきた。
──まぁいい。考えても仕方ない。分かったところで、どうにかなる訳ではあるまいし。
 考えるのを止め、ハナを抱き上げ「デスクの上に乗るな」と叱る。分かったのかは分からないが、「みぃ」と声を上げたので、理解したと思う事にする。診察室を出て居室に向かった。

2/6/2024, 10:54:10 AM