#10 星空の下で
ぼくは今も、この瞬間も星空の下に立っている。
朝でも、昼でも、宇宙に包まれている。
タワーに登っていても、階段を降りていても、地球の上に立っている。
たのしくても、かなしくても、どうでも良くても、棄ててしまいたくても、信じていても、もがいていても、何をしていても、満天の星空の下で息をしている。
うつくしいものは、実はいつもすぐそばにある。
そのことに打ちひしがれてしまうなら、込み上げる眼球の結露を拭って、星空の中にいることではなく、星空の下に立っている意味を考えてみようと思った。
みんながみんな、答えが出ないことに安心したくなれば、少しは人間もうつくしくなるのかな。
築年数の経ったマンションのそれでも最上階、ベランダに立って、数百光年前の輝きに向けて手で作った望遠鏡を覗き込んだ。
目を眇めながら、ぼくは何だか、辞めた煙草が吸いたくなった。
4/5/2023, 10:43:36 AM