やなまか

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私は彼のキッチンで覚えたての紅茶の入れ方を実践していた。
沸かし立てのお湯を茶葉を開かせるぐらいひたひたに。
ダージリンの濃い水色が出たら葉を取り除いて、熱いうちにはちみつを。
あの人は甘いのが好きだから。
氷で一気に冷やして、洗ったミントをすこしだけ揉んで乗せる。
淡い黄金色のアイスティのできあがり。氷がカラカラと音を立てる。
「できましたよ」
外仕事から帰ってきた彼に差し出すと、ごくっとひとくち。
「おいし」
良かった。
「あとで出掛けようぜ」
「うん」
「ありがとな」
頬に冷たいキスをされた。
「ほっぺだけですか」
私が挑発するように言うと、年上の彼はにやりと笑った。
「言うようになったじゃん」
グラスを置く音がした。
日焼けした大きな手が頬にふれる。
今日は冷たくて甘いキスだった。

10/27/2023, 11:15:28 AM