「あなたは私と共に行く運命なのです。あなたこそ、救世主となるべくして生まれてきたお方」
「なんで……なんでお前が生きてるんだ! お前はあそこで死ぬべきやつだったのに!」
「だまされてはなりません。私があなたを全力でお守りいたします。ですからどうぞ、この手をお取りください」
「貴様、ふざけるなよ。こいつは救世主なんかじゃない、死神だ!」
あなたたちは一体、だれ。
そもそも、じぶんは一体だれ。
なにも覚えていない。わからない。
「あなたこそ、邪魔をすると容赦しませんよ。あの方を亡き者にするなど、許されることではありません」
「なにも知らないようだな……おめでたいやつだ。いいだろう、先に貴様を片付けてやる!」
わからないまま、だれかとだれかが争っている。
逃げたい。でもどこに?
開いたばかりの目を、また閉じるしかできない。
ほんとうに信じられるものを、
ただしく導いてくれるものを、
それさえあれば、いますぐにでも歩き出せるのに。
お題:物語の始まり
4/18/2025, 2:48:35 PM