生粋

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【梅雨】


いつだったか

豪雨に見舞われた年

設備が土砂災害に遭った別の支店から

緊急の応援要請が来た


現地では対策本部が設置され

各支店が集まったメンバーで

班編成がされ

各班作業に取り掛かる


一通りの作業を終え

帰宅する頃には

すっかり暗くなっていた


自宅に着き

長女にマッサージをおねだりしようと

汗のせいか雨のせいなのか

重くなった作業服を脱ぎ

床に寝そべると

俺の背中を見た長女が

声も出さず

崩れ落ち震えている


痛みもなく

全く気付いてなかった

豪雨の爪痕


倒れ込んだままの長女が声を絞り出す

「パ.....パ.....パ.......」

「ん?パパ??」

聞き返すと

苦しそうに言葉を吐き出す涙目の長女

「パ....パ.....パ.....パンツがぁ!」


もはや原型を留めていなかった

ゴムしかないような状態だ

その日

マッサージされる事はなかった

6/2/2024, 7:39:24 AM