ユキ

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絵衣子は、カバンを開けた。中に手を入れて、教科書とノートを一冊一冊、とりあげた。学校支給のあまり出番のないタブレットも。筆入れとかもろもろ、全部とりだす。空っぽになった。
けれども、ひとつだけ取り出さなかったのがある。
「泣かないで、わたし」
手紙。いまどき、紙に伝えたいことを書いてくる人。いつも彼は、そうしてくれた。すべての言葉がかたちのある記念になるようにしてくれていた。
好きだったのに。
お別れの手紙なんて、酷すぎる。
ぜんぶ、ぜんぶ、捨てる。
でも、覚えておく。彼のこと、ぜんぶ。
だって、忘れられないもん。

11/30/2024, 6:36:48 PM