ホシツキ@フィクション

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「今日雨降るから、アンタ傘持っていきなさいよ〜」

俺が朝食を食べている横で、食器を洗いながら母が言う。
外はカンカン照りで朝からセミが鳴いている。

テレビの天気予報では気象予報士が
「今日は1日すっきり晴れるでしょう!」
と自信満々に言っていた。

「天気予報、今日晴れだって言ってるよ」

俺は無駄だと思いつつも母に反論する。

「そんなこと言ったって、降るの!」
まったく、と呟きエプロンで手を拭く、そして洗面所へ向かっていった。

母のこういう勘は当たる。


―――昔っからそうだった。

起きた時はどんよりと雲がかかっていて今にも雨が振りそうなのに、小学校へ行こうとすると母が
「今日晴れるよ」
と言った。けれど俺は傘を持っていった。
すると学校へ着いた時にはめちゃくちゃ晴れたのだ――。




荷物が増えるのは嫌だが、濡れるのも嫌なので俺は結局傘を持っていくことにした。
玄関に行くと「持っていけ」とばかりに分かりやすく折りたたみ傘が俺の靴の上に置いてあった。

『言われなくても持ってくよ…』
と諦めの気持ちも含め、母に「いってきます」と言った。


だが外れた。下校の時間になっても雨は降らない。
『外れるなんて初めてだな。』
結局折りたたみ傘は荷物になった。

だが最寄り駅に着いた途端、土砂降りだ。
『当たった』
帰ったら文句を言ってからかう予定だった俺は何だかガッカリした。


「うわー、雨、最悪…」

駅の喧騒の中でもはっきり聞こえた声。
幼馴染のカナだ。俺の心臓はドクンと跳ねた。

「カナ、久しぶり。今帰り?」
「久しぶり!!うん、そうなんだけど…最悪」

そう言ってカナは空を見上げる。

俺はここぞとばかりに折りたたみ傘を差し出した。
「これ使ってよ」
カナは一瞬考えたあと、クスッと笑った。
「もしかして、おばちゃん予報?」
「そう」と言って俺もつられて笑う。

「でも、そしたらあんた濡れちゃうじゃん、だから―」
「いいから!」
俺は半ば無理やり傘を持たせる。
「もう、最後まで聞いてよ、だから!一緒に帰ろうって!」

―――あぁ、母よ、いや、、母神様…!

天にも登るとはこのことか、俺は断る理由など無い。
もちろん快諾した。


駅と俺の家の中間にカナの家がある。俺はドキドキしながら他愛ない話をし、カナと別れた。
ちょうどその時、雨が止んで日が差してきた。



家に帰ると玄関に母がいた。

右肩だけ濡れてる俺を見て、ニヤッと笑ってこういった。


「私の勘、当たりそう!」


【通り雨】~完~




相合傘、、お互い相手を濡らさないように
傘の傾け合戦が始まりますよね。

私だけ?笑


いつも♡︎ありがとうございますm(_ _)m感謝感謝〜!

9/27/2022, 11:26:43 AM