ストック

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Theme:寂しさ

子どもの頃「ウサギは寂しいと死んでしまう」という都市伝説を聞いた。
今ならそんなことあるはずがないと笑い飛ばしてしまうが、当時の私は信じていた。

小学校の飼育小屋でウサギが飼われていた。
子どもの頃の私は彼ら/彼女らが寂しいと思わないように、休み時間の度に話しかけに行っていた。
放課後は校庭から他の児童の姿が消えてしまうまで、飼育小屋の横にしゃがんでウサギと一緒に過ごしていた。
「彼ら/彼女らが寂しい思いをしないように、私が助けてあげなくちゃ」
当時の私はそんな使命感に駆られていたのかもしれない。

今思えば、それは逆だ。
毎日のように飼育小屋に行っていたのは、私が寂しかったからなのだ。
学校に馴染めず友達もいなかった私に、側にいることを許してくれたのはウサギ達の方だった。
幼いプライドが「ウサギのためだから」と誤魔化していたけれど、本当は他でもない私の寂しさを紛らわせるためだった。
休み時間に楽しそうに話すクラスメートを見たくなかったから。
放課後に皆がお喋りをしながら帰る中で一人で帰るのは惨めだったから。

少しは社交性を身に付けた今の私は、ウサギの小さなぬいぐるみをバッグに付けて持ち歩いている。
まだ寂しがり屋はなおっていないようだ。

12/20/2023, 4:14:48 AM