27(ツナ)

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「涙の跡」

私の父は厳格で他人にも自分にも厳しい人だった。娘の私のことも一切甘やかさず育ててきた。

良い人と出会い結婚することになり、いよいよ今日が挙式の日。
父の腕を掴んで共にバージンロードを歩く。
チラッと横目で父を見たが、緊張しているのか普段通りの真顔だった。
それから順当に式は進んでいき、披露宴に。
宴も終盤、両親への感謝の手紙を読み上げる。
すると、途中なのに父が席を立ってどこかへ行ってしまった。

私も手紙を中断して母と一緒に父を追いかけた。
「お父さん!まだ、手紙読み終わってないよ。」
父はそっぽを向いて拳を握りしめて肩を震わせていた。
「……す、すまない。すぐ戻る。」
もしかして、泣いているのかと思いそっと近づいて顔を覗くと口をへの字に結んで必死に涙を堪えていた。
頬には既に涙の跡がくっきりと残っていた。


7/26/2025, 10:41:25 AM