とうの

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決別の朝

細い月が光る冷えた夜。
汚染された空気が漂う、廃墟と化したこのビル街で、二つの影が揺らいでいる。一つ目は少女のもの、二つ目はAD1999───人型に近い清掃ロボットのものだ。少女の隣、AD1999はうなだれるように、瓦礫にもたれかかっていた。
少女はうつむき、スイッチを押そうとする。
「待って。終わらせないで」
AD1999は言った。
腕の部分には「機能停止」の文字が点滅している。
「あたしはもう、見ての通り、終わりかもしれないけど、あなたが、あなた自身を終わらせる必要はないわ」
AD1999は少女の崩れかけた手を取る。同時に、少女の腕にあった「機能停止」の文字が消えた。
「あたしたち機械に、『生きる』って言葉は相応しくないかもしれないけど」
そう言って、冷たい金属の手で少女を抱きしめた。
「生きて。大丈夫。あなたが思ってるより、未来は悪くないはずよ」
東の空が白く霞んで、暗い青を光が覆っていった。
新しい、朝が来る。



11月28日 『終わらせないで』

11/28/2022, 11:45:57 AM