【街の灯り】
コツ、コツ…
外灯にぼんやりと照らされた道を歩く足音が1つ。
つい数日前までは、他に2つあった。
…生涯を共にしようと約束した者と、その子ども。
仕事を終えて帰ってみれば、家も、家族も、2人の未来と共に全て消えていた。燃えカスになっていた。
愉快犯による放火のせいで、私は何もかも失った。喪ってしまった。
復讐?考えた、考えたさ。
したところで2人が帰ってくるわけがない。
そう考えれば、復讐の意味なんて……ない。
灯りが消え掛けている。
私が消えるのも、もう少しだ。
街を出て、浜へと向かう。
─今日は月がよく見える。
ちゃぷ。…入るにはまだ少し冷たいや。
3人で海に行く約束を果たせなかった事が心残りだが、いないものは…しょうがない。
外灯と私の命、どちらが消えるのが先だろうか。
7/8/2024, 2:22:09 PM