こんなに沢山の人がいるのに、私の事を知っているのは君ただ一人。
こんなに人で溢れているのに、私の目に映るのはお前だけ。
都会の雑踏。すれ違う人の群れはみんなモノクロで、耳に入る音も意味を成さないノイズでしかない。
砂漠に一人でいるのと大して変わらないようなこの街で、ただ一人色彩を、意味のある音を、私にもたらしてくれる人。
灰色の海を一人で漂うようにして街をさまよっていた私に、眩い色彩と意味を成す声をもたらした男。
「会いたかった」
同時に呟いた言葉の奥に、隠された意図はきっと正反対なのだろう。
でも、それでも。
君が。
お前が。
きっと私の生きる意味になる。
END
「二人ぼっち」
3/21/2024, 11:59:17 AM