幼い子がいた。
丸みを帯びた体。茶色の長い髪は結ばれている。キラキラと輝く目、唇は弧を描く。ふと、既視感を覚えた。その子を私は知っているような、見た事あるような気がする。でも、何故だろうか。
「あ、お姉ちゃん!」
その子は私を見るなり駆け寄ってきた。私は一人っ子だからお姉ちゃんと呼ばれる筋合いはないはずなのに、何故か嬉しく感じる。
「君は誰?」
威圧感を与えないように、その子と同じくらいの高さになって聞く。
「誰って……私はお姉ちゃんだよ?」
「……?」
「だから、小さい時のお姉ちゃんってこと!」
耳を疑った。道理で既視感を覚えるはずだ。
でも、なんで小さい頃の私がここにいるんだろう。
「ねーねー、お姉ちゃんは今なにやってるの?」
「えっと……仕事」
「そうなんだ!疲れてない?大丈夫?」
わたしが顔を覗き込んでくる。純粋な瞳の中に私が映る。
「ちょっと疲れた、かな」
そう言うと何かを察したのか両手を伸ばしてきたので、脇の下に手を入れて抱っこしてみた。
「ねぇ、私」
「ん?なーに?」
「……強くなってね。お姉ちゃんとの約束」
この先のことを言ったところで、多分わたしには理解しがたいだろう。でも、今はそれでいい。
嫌でも理解しないといけない日が来るから。
「……うん、分かったよ!」
わたしが力強く言うもんだから、思わず笑みが零れた。
2025/02/12
未来の記憶
2/12/2025, 1:03:19 PM