わをん

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『エイプリルフール』

よく晴れた空の下、毎年いたずらやウソを仕込んでくる彼に今年は公園に呼び出された。
「まちがい探し5個見つけてね」
そういってポーズを取った彼の今年の仕込みはシンプルかつ簡単そうにみえる。
「靴の左右が違う!靴下も違う!メガネのレンズが入ってない!片目だけカラコン!それから、ピアスがイヤリング!」
「正解正解大正解〜〜!」
ふたりきりの公園にパチパチと彼ひとりぶんの拍手が響く。実をいうと公園にやってきて彼を見たときからわかっていたことだった。なんだかんだで長い付き合いだなぁと思っていると、彼はポケットをゴソゴソと探りだす。
「そんなあなたにこちらをプレゼント」
出てきたのはビロード張りの小さな青いジュエリーケース。開かれた中には透明に輝く小さな石があしらわれた指輪が収まっていた。
「結婚してください!」
「……告白、がウソ?」
「ほんとです!ガチです!」
「えっと、その指輪は実はイミテーションだったり?」
「残念、高級品です!」
「結婚する気が実はないとか……?」
「残念!めちゃめちゃにあります!」
腰を直角に曲げて指輪を差し出す彼。
「ウソみたいに幸せにします!よろしくお願いします!」
しばし呆然としたあとに湧き上がってきたのは嬉しさ。差し出されたままの指輪を両手で受け取るとへんてこな格好の彼は緊張から解き放たれたあとにガッツポーズとともに叫んだ。
「けど今日みたいな日をわざわざ選ばなくていいのに」
「こういう日じゃないと告白する勇気が出なくて……」
照れくさそうに笑った彼は恭しく私の左手を取る。指輪は薬指にウソみたいにぴったりと嵌まった。

4/2/2024, 6:30:59 AM