桜夏

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この時期になるといつも彼女の後ろ姿を思い出す。どう見ても寒そうな薄手のセーターを着ているのに寒さを感じさせないぐらい明るい顔で笑っていて、そんな彼女を見ていると自然と私も温かい気持ちになった。笑顔が曇りそうになったら決して私たちにはその姿を見せないように背中を向ける。そんな強いようでどこか弱々しさを抱えていた彼女をずっと私たちは心配していた。おそらく私は他の誰よりも彼女を心配していた。それは内に秘めた恋心のせいなのか、はたまた特別な思い出を一番共有していた相棒であったからか。その答えは未だに分からない。ただ1つ分かることがあるとすれば、彼女と過ごす時間が少なくなったこの日々はどうにも昔よりも色褪せてしまったということだ。もちろん昔みたいに目標が無くなったからということもある。だけど、この気持ちの空白感はそれだけでは無いだろう。彼女に会えるだけでその日は楽しいのに、帰る頃には寂しくなって、毎日会えないことがこんなにしんどいなんて思っていなかった。私がこれだけ彼女のことを考えていてもきっと彼女は私のことをそんなに考えていない。そんなことを考えていつも心が荒む。

11/25/2024, 7:41:10 AM