「先輩」
「何?」
「ただ呼んでみただけです。」
こんな会話をしてるけど自分は一切好きではない。
いつの間にか自分に懐いてくる後輩ができた。
「先輩のタイプってなんですか?」
「年上」
こう答えるのはこれで何回目になったのだろう?
いつの間にか君の会話のテンプレートになっていた。
友達が次の授業の準備をしていて
暇だったため本を読むことにした。
「おーい,呼ばれてるよ。」
クラスメイトの言葉に
「ありがとう」と言いながら廊下に出た。
「先輩,辞書貸してください。」
「は?なんで?友達いないの?」
そんなことを言いながら辞書を渡す自分も自分だ。
みんなのお腹が空く頃
ちょうどよくチャイムがなった。
お弁当を準備している時
やっぱり君は来る
「先輩,一緒にお昼食べましょう。」
笑顔で聞いてくる君。
ほんとに懲りないなぁ君は。
「いいよ。」
その返事が来るの本当はわかってるよね?
だけど君は嬉しそうな顔をする。
日が落ちてオレンジ色の街並みを君と歩く。
「ねぇ,なんでいつも着いてくるの?」
君について聞いてみた。
「なんでって決まってるじゃないですか。
先輩と一緒にいたいからです。」
笑顔で答える君。
「ほんと好きだね。」
私はそっと言った。
自分に懐く後輩なんて君しかいないから。
「先輩の思ってる好きと
自分が言ってる好きは違いますよ。」
なんて君が悲しそうに笑う。
「先輩が思ってる好きはlike
自分が思ってるのはLoveです。
...先輩好きです。」
君の声が頭の中に響く。
「えっと...」
言葉が出なくて自宅に向かって走って。
後ろで
「ちょっと待ってください!」
なんて聞こえたような気がしたけど
気にしないようにスピードを上げて帰った。
家に帰ると母に
「顔赤いわよ。どうしたの。」
なんて聞かれて
「なんでもない。ちょっと走ってきたから赤いだけ。」
そう言って荷物を置きに行った。
ご飯食べてる時も勉強してる時,
お風呂入ってる時だって君のことを考えてしまった。
おかげで勉強は全く頭に入らなかったし,
お風呂でのぼせたし,
災難だった。
朝起きると体が少し重くて
熱を測ると微熱だった。
「今日は休む」
母にそう伝えてから
君にも連絡しておいた。
「大丈夫ですか?」
その君からのLINEの通知だけで
体温が上がった気がした。
次の日もその次の日も微熱が続いた。
微熱が続くのは君のことを考えてしまうから?
それとも
君が自分を想う気持ちと
自分が君を想う気持ちが
同じことに気づいてしまったから?
─────『微熱』
11/26/2022, 10:47:39 PM