狼藉 楓悟

Open App

 友達って、なんなんだろう。
 漫画のようなぶつかり合って仲直りして絆を深めるなんて相手なら僕にはいなかった。
 「友達なんだから」と宿題を写させてくれと頼んできたり、掃除や雑用を押し付けてくる奴らは本当に友達?
 いや、これは絶対違う。良いように使われてただけなんだろう。きっと断れば気を悪くして二度と話しかけてこなくなるかいじめられるかだ。
 じゃあ、クラスでもそこそこ話すし、一緒に遊びに行ったりもする奴が2人。
 僕が死にたいといったとき、必死に止めてくれた子と一緒に逝くと言ってくれた子。これはどちらが正しい?

「……僕は君だと思うんだ。」
「ん、何の話?」
「いいや、ただの独り言。」

 運んできた机や掃除モップで作った適当なバリケードは案外その役をしっかり果たしている。
 扉の向こうから聞こえるのは必死に止めようとしてくれる友人の声。と、先生数人の声。
 先生にバレちゃったの嫌だなぁ。下にマットでも敷かれちゃう前にとっとと落ちなきゃだ。

「……最期ぐらい静かに逝きたかったなぁ。」
「場所、を変えるべきだったかもね。」
「うん……でも、何となくここが良かったんだ。」

 隣りにいる一緒に逝くと言ってくれた友達の方を見る。
 これから死ぬだなんて思えないような清々しい顔をしている。
 そっと手を握られた。誰かと手を繋ぐなんていつぶりだろうか。

「……ほんとにいいの?」
「うん、俺も疲れちゃったし。そっちこそ、アイツおいてっていいの?」
「……うん。もう、いいんだ。」
「じゃあ、いこうか。」

 彼に手を引かれるように、下へ。最期まで僕を否定せずにいてくれた、唯一人の友人と共に。


#3『友情』

7/24/2024, 11:08:54 PM