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 帰省して、ふるさとの街を歩く時は、なんとなく心のどこかで期待してしまう。ばったりと会えるのではないかと。
 駅、駅前の自転車置き場、バス停の前で。いるわけないかと思いながら通る。

 でも、本当に会いたいと思っているわけではない。お互いきっと変わってしまっているだろう。それを受け入れる準備は、全然できていない。
 あの時の記憶を景色に重ねているだけなのだ。

 でも、帰るたびに、心の深いところに沈めていた思いが、静かに波打つように感じられる。

「8月、君に会いたい」

8/2/2025, 9:27:50 AM