雨望

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一年前、私は彼女と別れた。
両片思いだったようだが、生活ができないほど落ち込んではいない。これで良かったと思っている。



一年前、私は彼女と旅をしていた。旅というか放浪というか怪しかったが、2人でテントで休んだり、怪しいキノコを食べたり、街を観光したり、とてつもない魔力を纏う魔導書に触れたり、世界の深淵に触れるようなこともあったが、問題なく仲良く旅をしていた。
ずっとこのまま2人で旅をすると思っていた。

だが彼女は魔力に弱い体質だということを私も彼女も知らなかった。魔力ら少しずつ彼女の体は蝕んでいたのだ。
彼女の不調に気づいてすぐ、医療や魔法が発展している大きな街に行った。
症状が出た頃には少し遅く、彼女は5年から7年療養しなくてはならなかった。
私は、その間ずっと彼女のそばにいようと思っていた。
だが彼女が、私にはずっと旅をして、私の病が治ったらそれまでしていた旅の話を聴かせて欲しい、一生のお願いと言った。
とても後ろ髪を引かれたが、彼女が一生のお願いと言い、何度もお願いをされたら、行くしかなかった。

彼女が亡くなったときいたのはそれから3ヶ月。
旅をするのはやめ、街から少し遠い場所に家兼魔導店を作った。
ゆっくり時間の流れを感じながら毎日を過ごしている。
彼女のところに逝こうとも思ったが、許されないよなと思い、やめた。
自然や、大好きな魔道具に囲まれながら過ごすのはとても楽しい。
だがふとした時、涙がこぼれてしまう。
自分の心を取り繕うのは大変だなと感じる。

このままここで彼女に会えるまで、ゆっくり過ごしながら待とうかなと考えている。

『一年前』

6/16/2024, 2:19:00 PM