マサ

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小学校の頃、

友達がいないわけではなかったけど、

転校をよくする環境にいた。

一年生の時に始まり、2年生の時は数回、

その後の学年も、とにかく、

よく転校しなきゃならなかったんだ。

だから、深く仲良くなった子はいなかった。

そうなる前にお別れなんだ。



三年生の時の転校したところは、家が公園の前だった。

だから、そこのブランコでよく遊んだ。

だってドアを開けるとすぐなんだ。

真ん前なんだもん。



その日も、ランドセルを家に放り込んで、

おしっこして、牛乳飲んで、ブランコしに行った。

ギーコ、ギーコって。

僕はいつも、水平、鎖も振り切れろ!ってくらい、

立ち漕ぎで急加速。

いつもの通りだったはずだ。



世界がいきなりひっくり返った。

ぶん回されたみたいだった。

ガーンと衝撃、耳鳴りがし続けた。

何が起こったかわからなかった。

裂けるように右足が痛い。

肘を擦りむき、右の太ももには、

深い傷口が開いて、血が流れ出ていた。



空に落ちたみたいだった。

地面にいるのにクルクル上昇している気だった。

僕は鉄パイプの下敷きになってた。

やっと理解した、ブランコが倒壊したんだ。

僕は大声で泣き叫んだ。



でも、真昼なのに、夜みたいに、静かなんだ。

誰も姿がないんだ。

助けて〜、痛いよおおお!と、

喚いても、誰も来てくれなかった。

不思議なんだ。

街の中にあり、車通りもある、

人の目にもつきやすい、

人通りだってある公園なんだ。



なのに、その日は、僕が鉄パイプをどかそうと

もがいて、大泣きして、大騒ぎしたって、

誰一人、僕を助けに現れなかった。

おじさんがあの時、家にいたはずなんだ。

でも、聞こえなかったんだって。

あんなにすごい崩壊音、

何より、僕が必死に助けを求めたのに。



僕なやがて泣き疲れた。

悟った。

誰も来てくれないぞ、。

助けてくれないんだ、。

自分でなんとかしなきゃって、。

なんとか身を捩って、

地面に僕を押し付け、

挟みつけていたブランコの支柱から抜けた。

その時、Tシャツが破れ、胸を擦りむき、ギャッ!

と叫んでいた。

その時、擦りむいてできた傷跡が今も左胸にある。



服は破れ、僕は知らぬ間に、

トイレに行ったばかりなのに、

恐怖で、おしっこを漏らしていた。

半ズボンの股が丸く湿っていた。

顔は、涙、鼻水で歪み、

服は破れ、血と泥、砂で汚れていた。

膝と膝を擦りむき、特に、

腿の傷が深く、血が流れていた。

頬がひりひるする、指をやるとぬるりとした。

指に血がべっとりと付いた。



僕は大声で、泣きながら、二十歩程度の目の前の家に帰った。

僕は今さっき、元気で、この家を飛び出したはずなのに。

痛いよおお!って、泣き続けた。

その時になっても、まだ、静寂で人気がない。

僕は玄関を開けて、叫び続けた、。

大人達はその段になって、ボロボロの僕を見て、

仰天し、騒然となった。

やっと、あたりに音や人の気配が戻ってきた。

嘘みたいに騒がしくなった。

家の前、公園にも人だかりができていた。

さっきまで、僕だけ取り残されていた世界が、

嘘のようだった。

僕は、病院に連れて行かれ、太ももを5針塗った。

幸い、それ以外は泣き叫んで消毒され、

大きめの絆創膏や、包帯の処置で済んだ。

骨折などの大怪我にならなかったのが不思議である。




9歳のあの日、判った。

いざという時、都会、人目の中でも、

助けてもらえないことがあると、。

たとえ家の真ん前だとしても、

何が起こるかわからないって、。

必死に大声をあげても、

泣き叫んでも、誰にも聞こえない、届かない。

親、大人たちが近くにいたって、

人通りがあるからって関係ない、。

人や動きがなくなる、

真空状態みたいになる隙間があるんだ、。



子供達が事件や事故に巻き込まれるのは、

あんな時間、隙間にストンと入っちゃった時だろう。

僕はいくら助けを呼んでも助けてもらえない

恐怖、闇の深さを少しは知っている。


















2/1/2024, 10:28:32 AM