かたいなか

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「どういうシチュエーションよコレ……?」
昨日の「これからも、ずっと」に続いて、今日の題目は「誰よりも、ずっと」。なお先月の題目には「ずっと隣で」があった。
「ずっと」被り3回目。頭の固さが壁となり、そろそろネタ枯渇の気配。なにより「誰よりも」が響いた。
「『誰よりも、ずっと』◯◯をするのが上手。『誰よりも、ずっと』◯◯をやり続けている。他は?」
趣味の話とか、恋愛系とか、友情モノに競技対戦シチュとかと親和性高いのか?
ガリガリガリ。物書きは頭をかいて、
「……たまにはお題パスも視野」
ため息を吐き、毎度恒例、物書きが途方に暮れる。

――――――

「ずっと」シリーズ第3弾。このアカウントも、ようやく投稿記事40個目のおはなしです。
最近最近の都内某所。某稲荷神社敷地内の一軒家に、人に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が、家族で仲良く暮らしておりました。
都市再開発、科学の進歩、動画投稿アプリの台頭等で、魔法も呪術も過去の存在となった昨今。
秘匿性と神秘のわずかに残る、地方や過疎地域に逃れていく物の怪の多い中、一家はこの地に残り、
都内に住む何よりも、誰よりも、ずっと長い間、人々の生活の明暗清濁を見守り続けてきました。

なお、そんな稲荷神社の化け狐一家。最近しみじみ、時代の流れを感じることがあるようです。
それは家族の末っ子。偉大な御狐、善き化け狐になる修行中の子狐が、修行で売り歩く不思議なお餅を作っている最中のことでした。

「良い香りがしているねぇ」
晩ごはん後の台所。父狐が、母狐と一緒に食べるためのおつまみを取りに来たところ、子狐が一生懸命、夜売るお餅を作っておりました。
「今日は、ピザお餅と肉まんお餅かな?」

「サバ味噌煮おもちと角煮おもちも作る!」
コンコン子狐、大好きな大好きなお得意様の提案で、低糖質なお餅のラインナップを拡大中なのです。
「えーよーばらんす良いと、おとくいさん、喜ぶの」
父狐が同じように餅売り修行をしていた◯◯年前は、食べ物が少なく、皆貧しかったので、お腹にたまるお餅や甘いお餅が好まれました。
今は健康ブーム。糖質少なめが客にウケるようです。

食べ物のトレンドは水鏡。容易に形を変え、波立ち、時代を映します。
「お前が親になる頃には、どんな餅がトレンドになってるだろうねぇ」
まだまだ遠い、孫狐が餅売る姿を想像しながら、子狐を抱きあげ、頭を撫でてやる父狐。
どの人間より長く人間を見てきた父狐でも、未来の食べ物を予想するのは、ちょっと難しいようでした。

4/9/2023, 1:13:28 PM