G14

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 俺がサボりから戻ると、教室に行くと誰もいなかった。
 移動教室?とも思ったが、今は昼休憩の時間で教室。
 皆は弁当を食べているはずだ。

 けれど教室にいるはずの皆は、どこにもいなかった
 俺がサボっている間、何が起こったのだろうか。
 まさか俺みたいに、『面倒くさくなったから帰る』と言った不良ばかりでもあるまい。

 ふとあることに気づく。
 他の教室も、人の気配がしないのだ。
 隣のクラスを恐る恐る覗いてみるが、誰もいない……
 念のためにさらに隣の教室を覗いてみるが、やはり誰もいない……
 この調子で行けば、他の学年も教室には誰もいないだろう……

 誰もいない学校というのは、まるで異世界のようだ。
 まるで世界に自分だけが取り残されたような錯覚を覚える……
 俺に起こっている異常事態に、気が狂いそうだ!
 
 なんとか『ここは現実世界だ』と自分に言い聞かせて、正気を保つ。
 そうでもしなければ、俺はどうにかなってしまいそうだった。

 俺は一度深呼吸し、何をすべきかを考える。
 学校で何かが起こったのは間違いない。
 けれど自分のちっぽけな頭では、何をすべきか何も分からなかった……

 大人を頼る?
 でも大人を頼るのは、
 こういう時はどうすれば……

 その時後ろから誰かの足音が聞こえてきた。
「桐野か?」
 俺の名前を嫌そうに呼ぶ声の主、それは生活指導のコバセンだった。
 不良の俺を目の敵にする、頼りたくない大人の筆頭だ……

 けれど、背に腹は抱えられない。
 俺は皆に何が起こったかは知る必要がある。
 恥を忍んでコバセンに聞く。

「コバセン、皆いないんだけど何か知ってる?」
「小林先生と呼べ!
 まったくおまえと来たら……
 他の生徒は帰ったぞ」
「帰った!?
 何で?」
「何でって、今日は終業式だからな」
 終業式?
 俺は唖然とする。
 事件が起こったと思ったら、下校しただけだったとは……
 俺は恥ずかしさのあまり、火を吹きそうなほど顔が熱くなる。

「大方朝からサボって気づかなかったな?
 どうせ、HRでも話聞いてないんだろ?
 いつもサボっているからこうなる」
 コバセンの、俺を馬鹿にするような言動に腹が立つも、まったくの事実なので言い返せない。
 畜生、よりにもよってコバセンの前で恥をかくとは。
 俺もついてない。

「コバセン、じゃあな」
 授業がないのなら、ここにいる必要はない。
 俺は踵を返して、げた箱に向かう。
 こういうのは寝て忘れるに限る

「待て、桐野」
 だが、なぜかコバセンに呼び止められる。
 そんなにコバセンって呼ばれるのが嫌いなのか?

「おまえは居残りだ」
「はあ、居残り?
 なんで自分だけ?
 皆帰ったんなら、俺も帰るよ」
 なんだよ、居残りって。
 説教はゴメンだ。

「お前、サボりすぎなんだよ。
 すでに出席日数は足りてない。
 補習を受けないと進級できん」
「……マジ?」
「大マジだ」
 ギリギリ進級できるよう出席日数を計算したのだが、計算をミスったらしい。
 やってしまった。

「というわけで補習を受けてもらう。
 拒否権はない」
 コバセンはジリジリと、俺に近づいてくる。
 いつものムカつく仏頂面も、今日だけは恐怖を覚えてしまう。

「桐野、じつは俺はお前を探していてな。
 げた箱に靴があるから、まだ学内にいると思って教師陣総出で捜索していたんだ」
「そ、そうなんだ。
 でも俺、今日用事あっから」
「逃げても無駄だぞ」
 俺がコバセンから逃げようと振り向くと、そこには数学のサトーと英語のスズキが、逃げ道を塞ぐように廊下に立っていた。

「桐野、もう一度言うぞ。
 お前に拒否権はない。
 親御さんからも了解は取っている」
 コバセンの方に振り向くと、コバセンの後ろにはさらに教師が増えていた。
 完全に囲まれ、蒙逃げられないことを悟る。

「待ってくれ。
 他にも出席日数ヤバイヤツいるだろ?
 なんで自分だけ……」
「安心しろ、他のやつらはすでに捕獲済みだ。
 大人しく補習を受けろ。
 力ずくでも受けさせてやる。
 自分だけは逃げられるとは思わないことだな」

7/19/2024, 2:33:58 PM