かたいなか

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「『何故、それが』好きな色か、好きな『何の』色か、好きな色『を使って何をしたいのか』。シンプルな分、アレンジもしやすいわな」
あと好きな色「が、嫌いな色に変わった経緯」とか、「私が好きな色は、あの人の嫌いな色」とか?
某所在住物書きは新旧500円硬貨の金と銀を眺めながら首を傾けた――白金色は要するに銀だろうか?

「『私が好きな色は白黒であって、断じて黒白ではない』とかにしたら、解釈問答書けそうだわ」
まぁ、頭の固い俺には常時書け「そう」であって、書け「る」までは百歩千歩遠いわけだが。物書きは更に首を傾け、最終的にうなだれた。
「色……いろ……?」
ところで日本には、「禁色(きんじき)」と「許色(ゆるしいろ)」なるものがあったらしい。
詳細は割愛する。

――――――

5月の「カラフル」に「透明な水」、4月の「無色の世界」。複数回「色」に関係するお題が出てきたこのアプリですが、今回は「好きな色」とのこと。こんなおはなしをご用意しました。
最近最近の都内某所、某稲荷神社敷地内の一軒家に、人に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が家族で暮らしており、そのうち末っ子の子狐は、不思議な不思議なお餅を売って、善良な化け狐、偉大な御狐となるべく修行をしておったのでした。

そんな子狐、たったひとりのお得意様である某アパート在住の雪国出身者から、なんと臨時の高収入。
お得意様が言うには、前のブショのバカジョーシが今日の半日ギョーム終了直後、突然頼み事をしてきて、
キューキョ来週「ユーキュー」を取りたいらしく、「ジムサギョー」と「シリョーサクセー」を私にタイリョーに押し付けてきたから、料理の時間を削ってザイタクの仕事時間にあてたい、とのこと。

お肉や野菜がたっぷり入った減塩低糖質のヘルシー惣菜餅を、2日半の8食分。それからおやつをたっぷり7個。しめて15個3000円。
コンコン子狐、いっちょまえに言葉は話せるので頭はそこそこ賢いのですが、なにせまだまだ生まれて○年なので、「馬鹿上司」だの「有休」だの「事務作業」だのはちんぷんかんぷん。
とりあえずお得意さんがいっぱいお餅を買ってくれた、それだけ覚えて、野口さんを3枚、代金として受け取りました。

「やった、やった!」
お札を3枚も貰った子狐。ぴょこぴょこ跳んで喜びます。ピラピラお札はキラキラ硬貨ほどキレイではありませんが、これ1枚さえあれば、子狐の欲しい物は、全部、全部手に入るのです。
「ピラピラが、こんなにいっぱいある!」
さっそく子狐、神社のお家に跳んで帰りまして、
野口さん3枚と、小さなお気に入りの宝箱を持って、ちゃんと人間に化けてから、人混みごちゃつく真夏日予報の商店街に走っていきました。

まず化け狐仲間の駄菓子屋さんで、子狐はチャリチャリキレイなおはじきと、コロコロかわいいビー玉を、野口さん1枚で買いました。
赤青紫のビー玉と、おはじきとお釣りが入り、宝箱の中に色が増えました。
赤も青も、勿論紫も、コンコン子狐の好きな色。
夕焼けと青空と、夜明けの色でした。

それから化け狸の和菓子屋さんで、子狐はあまーい金平糖と、明るい金色に透き通ったべっこう飴を、野口さん1枚で買いました。
薄緑色に薄桃色、白の金平糖と、明るい金色のべっこう飴で、宝箱の中はもっと色が増えました。
緑も桃色も白も金も、コンコン子狐の好きな色。
森の若葉と桜の花と、それらに差し込む朝夕の木漏れ日の色でした。

最後に魔女のおばあさんの喫茶店で、子狐は涼しく冷たいミントティーと、優しいマカロンとショートケーキを、野口さん1枚でご馳走になりました。
宝箱の中身は何も増えませんでしたが、子狐の心とおなかは、ほっこりいっぱいになりました。
ミントティーもマカロンもショートケーキも、コンコン子狐の好きな色で構成されていました。
だってお茶は若葉色、マカロンは桜色。ショートケーキには夕焼けの赤が飾られていたのですから。

「赤青紫、白に金色、色がいっぱいだ!」
好きな色でいっぱいになった宝箱の中を、キラキラおめめで確認して、コンコン子狐は大満足。
家に帰ってそれから1日、その日のお日さまが暮れるまで、子狐は、おはじきとビー玉と金平糖と、べっこう飴とほんの少し残った硬貨を眺めて、幸せに、幸せに過ごしましたとさ。

6/22/2024, 2:58:47 AM