自分だけが彼女の力を知っていることは、優越に浸れた。
惨たらしく殺された家族の身代わりをさせたのは事実だ。
数年前…と言っても昨日のことのように思われるが、諸国で起こり始めた反乱の火種が、何も関係のない自分の村さえも、交通の要所であるというだけで焼き打ちにされた。
外見でそしりをうけた自分たちは、彼女…スズカは妹であると身代わりを引き受ける。
皮肉なものだ。自分が仲間や家族を殺したようなもの。
本当の妹が亡くなったのは言っていない。ただ命が天に消える時だけは安らかで、それだけが救いだった。
「…ここ」
掠れた声がした。もう陽は高い。
「スズカ」
取り乱すかと思ったのだが、彼女は腫れ上がったまぶたのままあちこちを見回して、状況を悟ったらしい。
「ジョル…」
とまで呟いて、兄さん。と繋いだ。
柔らかい温かな手を取り、もう大丈夫だと。自分の声も掠れていた。彼女の受けた屈辱と痛みを思うと声が出ない。
色素の薄い髪が動く。
「ごめん、兄さん」
「いいや」
何を謝っているのか分からずに。ああ、進行が遅れたからか。
「前線は。増援は…出発しましたか」
「ああ。俺たちは午後に出る」
本来なら兄妹で抱擁を交わすところだろう。他の人の目もある。唇がゆがんで、身じろいだ瞬間、自分は包帯だらけの彼女の上半身をそっと寄せた。
ひどく臭いがして、怪我をもう少し治したら真っ先に風呂に入れてやりたい。
1/2/2026, 12:23:54 AM