宵風になりたい

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「俺、どっか遠くに行って、旅でもしながら生きるよ。」

お前がそう言ったのは高校を卒業した日だった。
中学も高校も成績トップのお前がどうして?って思ったよ。
お前ならどこの大学にも行ける。どんな企業だってお前を欲しがる。そんなお前に追いつこうと俺は学年2位を保ってきたのに。
そんな俺を見透かしたようにお前は笑って言った。

「この世界に飽きたってだけだよ。数字で価値が決められるこの世界に。」

お前はトップなのになぜそんなことを思うのか不思議だった。でも、お前はトップだからこそのプレッシャーとか、レッテルとかが嫌だった。だからもうやめる。ってさ。
そんなこと聞いてたらさ、俺のやってきたこともお前を苦しめてた気がして、罪滅ぼしをしたくて、口をついた。
俺も一緒に行くよ。
お前だけが周りから「変だ」とか、「落ちこぼれ」
とか言われる気がして嫌だった。俺のせいかもしれないのに。
泣きそうになりながら言ったら、案外お前は笑ってOKしてくれてさ。
そんで次の日には何も考えずにこの街を飛び出した。

  これが元学年1位のお前と、元学年2位の俺の
         逃避行の物語。

7/4/2025, 8:32:39 AM