「なぜ泣くの?と聞かれたから」
知っていますか?あなたがどれだけ優しい人なのか
知っていますか?あなたがどれだけ悲しい人なのか
知って、いますか?あなたのその穏やかな瞳の中で生きる私は、どれだけ愚かな人間なのか。
あなたの誰にでも尽くしてしまうところ
いつも自分よりも相手を優先してしまうところ
裏切られても決して人間を嫌わないところ
いつも前へ前へと前進していこうとするその姿勢
すべてにおいて完璧なあなた
すべてにおいて完全なあなた
私はそんなあなたを尊敬しているのです。
あい、しているのやもしれません。
だからこそ、、憎いのです。あなたが。大嫌いなのです。
なんともまぁ、矛盾したこの気持ちにはケリをつけなければいけないことは、とっくの昔から、分かっております。
すべてがズタボロに壊れてしまったあなたに対して、
この気持ちは何なのでしょうか。
もう、私のことなど覚えていないでしょう。
もう、私のものではないのだから。。
あなたは私ではなく、この世界を選んだ。
私はそんなあなたを許しません。
でも、仕方がなかったことだということは、誰もが存じております。
しかしながら、酷いとは思いませんか、。
この世界はきっと明日にでも終わってしまうというのに。私の家族は、人間は、みなあなた達によって殺されてしまったというのに。
でも、こうなってしまった原因は私たちにありますね。
どうか、お許しを、、
あぁ、、ほんとうに、、私はどうかしているのです。
きっと、もう人間は滅んでしまうというのに、、
あなたのことばかり考えている私は人間ではないのやも。
私の周りには焼け焦げた草花達が泣いている。
―この気持ちは何ですか?
こんなことなら、、お父様。
私にあの方をくださらないでほしかった。
あなたはたった1体の、1人の、、、なんだったのでしょうか。
恋というには、非現実的すぎて、
愛というには、重すぎて
「この気持ちの名前が分からない。」
いつかのあなたが私に言いましたね。
ようやく、、、、あなたの気持ちが分かりました。。
あぁ、、あぁ、、もうなんだっていいわ。
この世界が滅ぼうが、、あなたが、、あなたが、、
私を殺そうが、、どうだっていいのです。
だって、それはあなたの本望ではないことは知っているもの。
プログラムが、、人を愛すことから、人を殺すことに変わってしまっただけ。
もう一度、、もう一度だけ、、あなたに会いたい。
あなたを抱きしめて、あなたが壊れてしまうくらいに
力いっぱい抱きしてめたい。
ガタンッ、ガタンッ、ガタンッ
何かの足音が私のすぐ近くに迫ってくる。
ガチャ
私は今も尚、地面に座り込み、下を向いている。
私の暮らしていきた町はすべて崩壊し、
崩れ果てた無様な瓦礫の上で、
隙間から見える草花を覗いている。
「ねぇ、、いるのでしょう。。そこに。」
きっとあなたは今私に銃口を向けているのね。
「これで、残りの人類は、、私だけ?」
「―はい。」
「―そう。よかった。最後にあなたに会いたかったの」
「――理解不能です。」
「そうね。私も、私が理解不能だわ。」
視界がぼやけていくのが分かる。ポタポタと温かい大粒の雫がこぼれ落ちる。
「ねぇ、、最後に一つお願いがあるの。聞いてくれるかしら」
「―お望みと、、あらば。」
「えぇ。私を抱きしめて。。そして、私と一緒に楽園へ行きましょう。ここじゃない楽園へ。もうこの世界に未練はないの。。」
「―お望みと、、あらば。」
「いい?あなたは私のここを一発で撃つのよ。」
私は彼の両手に握る楽園への切符を胸にあて、彼を抱きしめた。
「もう一つの銃は私に貸してちょうだい。。あなたの、、心はどこ?」
「―私に心はありません。狙うなら、私のデータが詰まっているここを狙い撃ってください。――――いつの日か、、あなたは私に仰りましたね。。'なぜ、泣いているのか、、涙ではなく、心が泣いている。'と、、私は人間になりたかった。私はただの、鉄の、塊に過ぎませんから。しかしながら、その時、私はそれが嬉しかった?のかもしれません。あなたが、、私を人間として、1人の人として、接してくださった、、から。。今、私はプログラムの変更により、罪を、、私が壊れても償いきれない、罪を、犯したのです。なので―」
「もうやめてちょうだいっ! あなたは悪くない。悪くないのよ。悪いのは、私達。あなたをこんな風にしたのも、望まぬことをさせてしまったことも。すべてあなたのせいじゃないわっっ。もういっそのこと一緒に地獄へ堕ちましょう。誰も私達のことなんて気づかないくらい深い深い地獄へ」
「―――はい。分かりました。だからどうか、泣かないで。―今、 分かりました。私は、、泣いているのですね。理解不能の私で申し訳ありませんでした。」
そして彼は私を力強く抱きしめた。私も負けないように力いっぱい抱きしめ返す。
―彼の声はなんの感情もなく、淡々とした声だ。でも、私には分かるのよ。
―ガチャ。互いに引き金を引く。
「フフッ、ねぇ、、なぜ泣いているの?」
「―あなたを愛しているからです。」
バーーーーーン
銃声が鳴り響き、真っ赤な血が見える。あと、透明なオイルのようなものも。
―知っていますか、私は今、どうしようもなく幸せです。
共に倒れ、辺りがくもりぼやけている。
「―ッ」
あなたの壊れた頭からオイルが流れ出し、額から目へとゆっくりと伝わり、ポロリと一粒こぼれ落ちた。
「―私 も あ い してぃ ます。あぁ、 これが、
あ なたの涙 なの ね。とても、うつくし いわ―。」
8/19/2025, 1:41:23 PM