二十数年前の塩竈の冬空、白い星々に埋め尽くされた夜空は、地面に降り積もった雪よりも遥かに美しかった。あまりの白の美しさに、波の花が波飛沫とともに、うっかりと空まで弾け飛んでしまったと物語っても不思議ではない。
私の瞬きに合わせて、チカチカと光が点滅する。数光年、数十光年、数千光年の星々が私と交信している。
私と同じ年の星がいたかもしれない。全て同じ星のように見えて、色々な星の輝きがあった。星と人間、別の生き物のようで、同じ生命体でもあった。
目を閉じなくても、あの夜空を思い描ける。私の瞳の中に星空は溶けていった。瞬きを繰り返し、まつ毛で何度も星空をかき混ぜて虹彩に焼き付けた。空と私が一つになった瞬間だった。唯一の瞬間だ。
この二十年で、空はすっかりと汚れてしまったから、何度瞬きでかき混ぜても、突き刺す煙と異常な陽光に目が痛む。溶けてしまいたい空は、どこへ行ったのか。尋ねたい星々も、害する光の洪水に呑まれてしまった。
(250520 空に溶けた)
5/20/2025, 1:10:48 PM