Ray.O@創作

Open App

【好きな本】

昔から本が好きだった。厚ければ厚いほど、古ければ古いほど好きだった。ずっしりと手にかかる重み。古い紙特有の香りに、めくるたび立つパリパリとした音。

少し大きくなったら、現代物の小説も、文庫本も好きになった。小さい本は、その中に世界がキュッと詰まっているような気がする。ミニマムな私専用の世界。家に引き篭もる勇気がない私は、本の世界に閉じこもった。

それからまたしばらく経った。私はやっぱり自分の世界で生きるのが下手みたいで、周囲からの圧力によって早々にして自分の世界を捨ててしまった。いい成績と、いい仕事、ひいてはいい給料。周りに溶け込むために、いつか閉じこもるのをやめてしまった。

でも、挫折したとき。うまく行かないとき。不意に本を読みたくなった。1日10分くらい、少しずつ、少しずつ読み進めた。電車の中だったり、布団の中だったり、読んでいるうちに机で寝落ちしたり。それでも本は手放せなかった。

本当は、閉じこもるツールじゃなくて、自分を表現してみたい。本物のどん底にあって、一晩中泣いて、私は本当の願いに気がつけた。

書いてみよう。綴ってみよう。今、私はもう一度、言葉に向き合おうとしている。この叫びが、誰かの心に届く日が来ますように。私の描く世界が、誰かの支えになれますように。

6/16/2024, 5:49:06 AM