たぬたぬちゃがま

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「俺たちの夏は終わらない!」
「宿題が終わらないからアディショナルタイム!てか。やまかましいわ。」
蝉の鳴き声が喧しい中、俺たちは机で向かい合って宿題を片付けていた。

「あのさ、なんでこんなにやってないの?なんなの?」
彼女がイライラした表情で責めてくる。
「お前だってやってねぇじゃねえかよ。」
「私がやってるのは塾の課題ですぅ。学校のは片付けました!」
馬鹿にしたようにぴらぴらとプリントを見せてくる。しかし俺にとっては朗報だった。
「やったぜ見せろ。」
「嫌だよくたばれ!!」
即答されるが俺はめげない。なぜこいつがここにいるかというと、親がこいつに泣きついたからだ。俺が頼んでも首を縦に振らなかったくせに。
「おばさん、心配してたよ。自分の勉強くらいやりなよ。」
「じゃあ教えろ。」
「教わる態度じゃないんだよなあ……帰りたいなあ……。」
おそらく母親からもらっているであろう賄賂、ナントカっていうグッズと今の状況を天秤にかけている。母親が昔ハマっていたものに、遅ばれながらこいつもハマってくれたおかげで今の関係ができている。
「じゃあヒント!公式教えて。」
「それはこの公式を……。」
「で、これをどうやって使うの?」
「…………。」
帰りたいと顔にでかでかと書いてある彼女を尻目に、俺はこの状況がいつまでも続けと願っていた。


【終わらない夏】

8/17/2025, 12:57:28 PM