時刻は午前0時。なんだか小腹が空いたけど、冷蔵庫が空っぽだったから、近所のコンビニへ買いに行くことにした。
ダウンを羽織ったら、ソファに寝そべってテレビを見ていた同居人は顔を上げて「どこ行くの」と聞いてきた。「コンビニ」と答えたら「俺も行く」と返ってきたので、ちょっと驚いた。出不精のこいつが、珍しいこともあるものだ、なんて思いながら、二人連れ立って深夜のコンビニへ向かった。
俺は肉まんを買った。隣を歩く男は、ピザまんを買っていた。帰り道を歩きながら、さっそく肉まんにかぶりつく。
と、ふいに上着の袖を引っ張られた。何、と聞けば、男はちょうど通りがかった公園を指さして「座って食お」と言った。座って食ったら寒いじゃん。帰りながらでいいだろ、と言う俺を無視して、同居人はさっさと公園に入っていった。
俺は早く帰りたかったが、いま家の鍵はあいつが持っている。俺は舌打ちをして、同居人を追いかけた。
同居人はなぜかブランコに座って、もそもそとピザまんを食っていた。俺はため息をついて、ブランコを囲む低い柵に腰かけた。深夜の公園で、ブランコに乗ってピザまんを食らう成人男性。と、それを眺める成人男性その2。どういう状況だ。
「ベンチに座って食うんじゃだめなの?」
「ベンチよりブランコのほうが楽しいだろ」
よくわからない返事が返ってきた。別に漕ぐわけでもなく、座ってピザまんを食ってるだけなんだから、楽しいもクソもないだろう。
「ブランコって、なんでブランコって言うのかな」
チーズをみょーんと伸ばしながら、男は言った。俺はちょっと考えてから「ブラブラして遊ぶ遊具だからだろ」と答えた。
「でもそれじゃ『ンコ』はどこから来たのって話になるよね」
別にそんな話にはならないけどな、と思いながら、肉まんを咀嚼する。
「単純に『ブラブラ』でよくない?」
「それはなんかほら、親しみやすさ的な」
「親しみやすさで言うなら『滑り台』ってちょっとひどくない? 無機質すぎるだろ、名前」
「まあ、言われてみれば」
「『ブランコ』に倣って『スベリンコ』に改名するべきだと思うんだけど、どう?」
「どうでもいいです」
心の底からどうでもいい。
【テーマ:ブランコ】
2/1/2026, 10:43:25 AM