千年先も私はここにいるのだろうか。人と出会い。人を愛し。そして失う。何十回も何百回も繰り返した。人間はあまりに脆い。すぐに死ぬ。何人もの知人の死に目に遭遇した。そして私は一人の女性に出逢った。出逢ってしまった。彼女は透き通るような白い肌に白い目雪のように真っ白な長い髪の毛。雨が降っているわけでもないのに傘を差していた。片方の手には白杖を持っており信号待ちをしていた。私はその姿に見惚れてしまった。信号が青になり、彼女が一歩一歩と進んでいく。ちょうど横断歩道の真ん中辺りに差し掛かったとき、トラックが猛スピードでやってきた。トラックの向かっている方向には彼女がいる。私は考えるよりも先に体が動いた。私は彼女に覆いかぶさるような形になった。その結果、私は入院しないといけないほどの重症だったのだが、その必要はない。彼女は傷さえなかったものの酷い火傷をしていた。私はすぐに病院に連れて行った。命に別条はないが入院しなければならないそうだ。私は毎日彼女のお見舞いに行った。次第に彼女と仲良くなり何でも話すようになった。
「私、人とこんなに仲良く話せたの貴方が初めてです笑」
「そうなんですか!嬉しいです笑」
「そういえば翔さんは大丈夫なんですか?私をかばってトラックに轢かれたと聞いたのですが、、」
「あー。大丈夫ですよ笑。幸い怪我はありませんでしたし。」
「そうなのですか!その節は助けていただきありがとうございます」
「いえいえ!当たり前の事しただけですし、あんなんでは俺は死ねませんから笑」
「お強いのですね!死ねないということは翔さんは死にたいのですか?」
「まぁ、色々と人生に疲れましたし。」
「そうなのですか、。」
「すみません。少し重い話になってしまいましたね。私はこの辺で、、」
「あ、あの!わ、私が翔さんの生きる理由にはなりませんか?」
「、、。そうですね。私は貴女が生きてくださっているだけで明日が楽しみです。」
「そ、それは、、えっと」
「私、貴女のことが好きなんですよ。」
「へ?」
彼女は頬を赤らめそんな素っ頓狂な声を出した。そして私達は付き合うことになった。彼女との日々は充実していた。とても楽しかった。幸せだった。
しかしそんな幸せも長くは続かない。幸せというのは手に入れた瞬間から手放すことが約束されている。そしてその日は唐突にやってきた。彼女が死んだ。死因は癌だった。およそ二十年という短い期間で彼女の人生は幕を閉じた。あれからどれだけの月日が経ったのだろうか。百年、二百年?まあ、そんなことはもうどうでも良いのだがな。彼女のいない世界では生きていても仕方ない。だが私は死ねない。老いて死ぬことは愚か、病気や事故でも死ぬことはない。つまり不老不死というやつだ。人間の憧れのようなもの。だが人間たちは知らないのだ。死にたくても死ねない苦しみを、大切な者たち、心から愛した者が失われた世界で生きる辛さを。まさに地獄という言葉がふさわしい。きっと私は何年先も待ち続けるのだろう。アルビノの彼女を想いながら。
2/3/2023, 1:27:51 PM