昨日へさよならしようぜ。
ってあいつが言ってきた。
昨日はあの子の...私達の幼馴染の命日だ。
今年でもう3年になる。
一緒に入ろうな、って言ってた高校で、
私達は今日もあの子の影を追いかける。
あの子の家族は引っ越してしまって家はないし、
手元にはふざけて3人で撮ったプリくらいしかない。
「もっと遊べばよかった。話せばよかった。」
なんて、何回も考えた。
でも、もうそれは遠い遠い昨日になってしまった。
それに、
「もう忘れてしまってもいいんじゃないか」
って思ってしまう自分が嫌になる。
何が忘れる、だ。
3人の思い出はそんなすぐ捨てられるものじゃない!
そう思って、もう3年。
もう進路を決めなくてはいけない。
そんな時に、あいつは提案してきた。
「昨日へさよなら?」
「おう」
昨日へのさよなら、とは。
聞けば、一種のおまじないらしい。
透明な水と願い事を書いた紙。
それと大切な思い出を川へ流す。
「不法投棄にならない?」
「なに、神様もこんくらいは許してくれるだろ」
あいつをつれってたんだから。
そんな言葉が聞こえた気がした。
「俺はやるよ。先に進むためにも、このままじゃきっとだめだ。あいつには悪いけど、きっとお互いのためにならないと思う。死んだ人の声なんてわかんないけど、ずっと引きずられたってあいつも落ち着いて寝れないだろ?」
なんて言われた。
ずるいよね。
そんなこと言われて、見捨てる奴がいるか。
幼馴染なめんな。
私達は裏山へと向かい、手順をなぞった。
「お互い、進めるといいな。」
「かっこよく言ってるけど、あんた留年の危機じゃ無かった?」
「今言うなよ...!あいつに聞こえるだろ!?」
「案外笑ってるかも」
「...そうだといいな」
山を降りる視界の端、
あの子の長い髪が見えた気がした。
5/22/2023, 11:27:57 AM