かたいなか

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どこまでも続く地平線、どこまでも続く斜陽の赤。
実にノスタルジック、エモい光景です。
「どこまでも」のお題には、丁度良い景色です。

エモい景色を背景に、エモいことをしてるものを置いとけば、今回のお題はハイ完成。
最近最近の、「ここ」ではないどこかの世界、とある厨二ふぁんたじー組織を舞台にして、
どこまでも平和なおはなしをご紹介しましょう。

その日の世界線管理局の、夕暮れはどこまでも続く美しい茜色で、雲が良い味を出していました。
茜色の向こうの向こうは、あと5分10分もあれば沈んでしまいそうな人工太陽が、
運行プログラムに従って、落ちてゆきます。

それを見ておるのが今回のお題回収役。
「カモ」のビジネスネームを持つ法務部局員です。

夕陽を眺めて、手すりに腕と体重を預けて、
コーヒーの紙コップなどに唇を寄せるカモさんは、
コップの中身を飲み終えると、
長いながい、ため息を吐きました。

ひとり、たそがれてるカモさんです。
ドワーフホトという局員に、恋にも似た、忠誠を誓っておるカモさんです。

「ハァ。 ホト様」
たそがれカモさん、言いました。
「やはりあなた様は、聖母、仙女、悪を知らない」
ホト様、ホト様。だからこそ俺は、いや、私は。
再度ため息など吐くカモさんは、
どこまでも、どこまでも続く茜色を、
ずっとずっと、見ておったのでした。

で、そのタソガレっぷりをカモさんの同僚にガッツリ見られまして、ズルズル、ずるずる。
実はサボっておったところのカモさんを、どこまでもどこまでも、引っ張ってってしまいました。

「ホト様」
「はいはい。仕事の続きしようね」
「ああ、ホト様……」
「法務部長たちが戻ってくるまで1時間だよん」

たそがれカモさんがタソガっておったのは、
カモさんの推し、ドワーフホトが、敵対組織の尋問を任されておったのを、たまたま見たからでした。

『こんにちは〜。機構さん、はじめましてぇ』
本来の尋問担当・スフィンクス査問官の到着が20分送れる予定であったので、
「これを言え」とスフィンクスに渡されたメモを手に、ドワーフホトが果敢にも、
専門外ながら、尋問に入ったのでした

が。

『えとね、お紅茶とぉ、お抹茶と、お煎茶〜』
ドワーフホトが始めたのは、管理局を敵視しているスパイへの追求ではなく、まず湯沸かしでした。
『ヤマカガシさんみたいに、毒とか薬とか、ヤバい薬とかは入れてないから、だいじょぶだよぉ』

お菓子もヨリドリみどり、揃えてきたからテキトーに取って食べてねー。
ドワーフホトは尋問相手に、お茶とお菓子を振る舞い始めたのでした。
これには尋問対象も目が点々。
これじゃ、ただのお接待です。来客対応です。

「だって、お客様だよぉ」
ドワーフホト、どこまでも澄んだ、美しく光る目で素直に言いました。
「スフィちゃんから『管理局が管理してる航路に、勝手に未知の交差点を敷設した』って聞いたけど、
アレだもん、推定無罪だもん、まだ悪い人って、決まったワケじゃないもん」
さぁさぁ、お茶、どーぞ。
どこまでも透き通る、美しい瞳で対象を見つめて、ドワーフホト、言うのでした。

それを、たそがれカモさん、見ておったのでした。
その様子をいつまでも、いつまでも、
スフィンクスが尋問のためにドワーフホトと交代するまで、見て、おったのでした。
『ホト様……』

どこまでもノスタルジックで、どこまでも平和なおはなしでした。 おしまい、おしまい。

10/13/2025, 9:57:40 AM