【曇り】14
フラワーガーデンを後にしてしばらくしてふと空を見上げれば、さっきまで晴天だった空は灰色に染まりもう少ししたら雨でも降ってきそうだった。
「幸先悪いな…」
私は木の陰に背を寄せ少し休む事にした。
?「こんにちは。可愛いお嬢さん」
「…」
また出た。
声がした方を見上げればそこには赤紫と紫の縞々(しましま)のまるで囚人服を彷彿させるよな服を着た青年が木の上から私を見下ろしていた。
「…私に何の用?」
?「用があるのは君の方なんじゃないのかい?」
「声をかけてきたのはあなたでしょ?」
?「僕はチェシャ猫だよ、お嬢さん」
「名前なんて聞いてないわ」
何だか会話がちぐはぐと噛み合わない。
一体この青年は何者なのか。
頭から猫の耳、お尻からは長い毛並みの尻尾が生えている。
まるでお伽噺に出てくる猫のよう。
「あ」
そうか、この世界はあの世界の中なのかもしれない。
そう言われれば、これまでのへんてこな人達のことも頷ける。
だけどあれはあくまでお伽噺の世界。
現実にあるなんてそんなこと有り得るのか?
チェ「考えてるね?そうここはあの世界の世界。だけどあの世界のようであの世界じゃない」
「あの世界じゃない?」
チェ「そうさ」
「なら、どういうせか…」
チェ「ここを真っ直ぐ行けばイカレ帽子屋達が御茶会をしているよ?」
「そうなのありがとうって今はそうじゃな…いない?」
さっきまで木の上からに何処かにやにやと人をバカにしたような面を見せてた青年はいつの間にかいなくなってしまっていた。
「今のは一体何だったの…?」
私は不思議と首をかしげ、取り敢えず真っ直ぐ行ってみることにした。
ただ、別れ際また会おうと言われなかったことにほっとした。
3/23/2025, 11:45:33 AM