「なんて素敵な世界だろうか。」
皆が自由に食事し
皆が自由に眠れて
皆が自由に勉強し
皆が自由に生きる
そんな世界ももう目前であろう。
彼はそう言った。
今ではSNSを通じて誰とでも話すことの出来る私たちの世界では、きっと今もどこかで口論が行われているだろう。
些細なことで言い争えるうちはまだ幸せなのかもしれない。
彼の生きるこの世界では、皆が優しく、平等で、仲違いのしない、何とも平和な世界への道が確実に出来上がっていっている。
そんな一見幸せそうな世界で、彼だけは異論を申し立てていた。
今私たちが生きているような暑い夏は存在しない。
排気ガスだって蔓延っていない。
海に空に空気、全てが透き通っている。
だが、何かが足りないのだ。
優しさだけでは学べないこともある。
完全に平等ではつまらない人生だってある。
仲違いする時もあるからこそもっと友情が深まることもある。
きっと、彼らはそんなことを一生知らずに人生を終えてしまうのだろう。
そんな心に響くようなことが何も無い世界を変える為に、彼は次元を跨いでこの世界にまでやってきたのだ。
地球温暖化、排気ガスなんていらない。そんなものが無くたって当たり前に生活は送れるだろう。だが、様々なものを作り出す為には、必然なのかもしれない。
彼は、真っ暗な中にある一筋の青い光を背中に、夜中へと歩き出して行った。
#Midnight Blue 0822
8/22/2025, 11:23:07 AM