名無しさん

Open App

『遠い鐘の音』

少し肌寒い季節
帰りのお誘いを受けた
珍しく君から声をかけられたので、嬉しくて
今日あるはずだった居残りの予定をすっぽかした

「それで、話って?」
枯れ木がこちらを覗いている、通学路
わくわくと待っている私と対照的に
君は気まずそうに目を逸らしてから、口を開いた
「明日、転校することになったから
最初に伝えたくて」

その言葉が
君がいなくなる現実が、すぐには呑み込めなかった
「え、転校って、なんで」
言葉が喉に引っかかる
ぐるぐると意味の無いことが頭をかき混ぜる
そんな私を見ないようにか、目を逸らしたまま
君は気まずそうに言葉を続けた
「家の事情で」

「家の事情って何
どうしてそうやって理由を話さないの!
友達じゃなかったの?!
なんでそうやって言うのが遅いの!」
言いたくないのに、君を傷つける言葉が口から漏れだした
1度言ってしまえば、ボロボロと出てくる
言葉の数々
「だいたい、君が早く言ってくれなきゃ分かりっこないし
いつもいつも言葉足らずで、私に理解を求めて
ほんと、友達なんかにならなきゃ良かった!」
言ってから、自分の口を抑えた

そんなこと言うつもりじゃなかった
友達だと言ったのは私なのに
君にそんな顔させるつもりじゃなかったのに

「ごめんね」
そう言って、君は悲しそうに笑った
夕方になって、近所の小学生が帰っていく
「もう行くね」
ひとりで帰る君を追いかけることなんてできなくて
その場で立ち止まった

遠くで、5時のチャイムが鳴っていた

12/13/2025, 12:53:22 PM