『終わりにしよう』2023.07.15
「終わりにしよう」
そう静かに告げて、彼はぐるりと一同を見渡した。
そして、こちらに向かって指を差す。
「お前がこの惨劇の犯人だ」
まるでヒーローか何かのように言い放った。実に気持ちのいい啖呵だが、顔がニヤついているので締まりがない。
周りもそう思っているようで、呆れたように肩を竦めたりため息をついたりしている。
彼はこういった場では、とにかく格好を付けたがる。背が高いからかなり絵にはなるのだが、いかんせん残念すぎるのだ。
残り少なくなった人数で、もう後がないことはいくら残念な彼でも分かっているはずだ。
だからこそ、格好をつけたいのだろう。
あとはどうにでもなれ、と降参の意味を込めて両手を挙げる。
彼がドヤ顔をキメたその時――。
「人間と人狼が同数になりましたので、人狼の勝利です」
笑いを噛み殺したような声で、成り行きを見守っていた男が結果を述べる。
「なしてさ!」
ドヤ顔から一変して情けない顔になった彼。
ガックリ崩れ落ちる彼に、人間サイド人狼サイドからからかいまじりの慰めの声がかけられたのだった。
7/15/2023, 11:19:48 AM