作家志望の高校生

Open App

一般的に盛り上がりにくい話題がある。それが、天気の話と夢の話。一方的に話すだけになってしまうこれらの話題は、中々会話が弾まない。
そんな定石を、真正面からブチ破ってくる存在が一人。目の前の男である。
この男、なんともまぁ酔狂なことに、入学式早々から一目惚れだのなんだのと言って俺に付きまとってくる。目立った友人も居らず、人との交流があまり得意でない俺にとって、プライベートを邪魔されているようでうざったかった。
そこで、俺は考えた。ひたすらに俺がつまらない人間だとアピールし続ければ、いずれは向こうから離れていくのでは、と。そうすれば角も立たないし、俺は束縛から解放されることができる。
「うんうん、それでそれで?」
が、しかし。彼は中々にしつこく、そして俺に盲目すぎた。俺はもうここ一週間ほど、その日の天気の話と俺が見た夢の話しかしていない。もっとも、天気は話すことがあまりにも無さすぎたので一昨日からはひたすら夢の話をしているのだが。
「…………お前さ……つまんねぇだろ、こんな話。」
呆れ返って、思わず言ってしまった。彼は大型犬のようなくりくりした目をぱちりと瞬かせ、それから心底おかしいとでも言いたげに笑った。
「なに、そんなふうに思ってたの?楽しいよ、君の話ならなんでも。」
きゅう、と彼の目が細められて、その目があまりに蕩けきっていて。俺まで恥ずかしくなってくるほど甘ったるい表情をした彼の肩を、ひとまず強めに殴った。
「あ、照れてる。」
意地悪げな表情で笑い続けるので、なぜだか無性に腹が立って仕方ない。俺が文句の一つでもつけてやろうと口を開きかけると、彼はそれに被せるように口を開いた。
「……それに、最近は君がたくさん話してくれるから。どれだけつまんない話したって、君が喋ってる限り僕は聞き続けるよ。」
最早俺は何も言えなくて、開きかけた口は空気を漏らしてはくはくと開閉を繰り返している。じわじわと顔に熱が滲んで、それを隠すように顔を伏せた。
俺はまだ、知らなかった。この日の晩、夢の中で彼に熱烈な告白を受けることも、それで絶叫しながら飛び起きる羽目になることも。
翌日、俺は夢の話は一切できなかった。

テーマ:こんな夢を見た

1/24/2026, 7:48:14 AM